顧客満足は仕組みづくり
【問題】
・創業1901年。アメリカで100年以上続いている老舗の百貨店
・15年ほど前は、多くの米国人がその名前を知らないマイナーな百貨店だった
・現在、全米に40店以上の展開をしており、「自分の町に来てほしい店・企業」というアンケート調査で一位になっている百貨店とは?
答えは、ノードストローム。
顧客に対してノーと言わないノードストロームとして有名。15年前、米国で最も大きな百貨店はメーシーで、ノードストロームは米国ではほとんどの人が知らないシアトルのローカル百貨店にすぎなかった。しかし現在、メーシーは会社更生法の元に再生中。ノードステロームは急成長し全米に40店以上も展開。しかも米国で最も成功した百貨店となっているのです。15年で急成長をしたノードストローム。
そこには、今の時代に販売を延ばす大きなヒントが隠されているのではないだろうか?
ノードストロームと聞いて、まず思い浮かぶのは、徹底した顧客満足。例えば、紳士服売り場で一般の百貨店では呆れられるのが落ちのワイシャツの試着を希望しても、にっこり笑って応えてくれる。スーツを作りたいというお客さんには、担当の店員がそのままずっと付き添って店内を回り、ワイシャツからネクタイ、さらに靴までをコーディネートしてる。購入したい靴をもって行くと、イスに座らされ、従業員が膝まづいてきめ細かい要望に答えてくれます。そして足の形にぴったりと合うまで、何度でも靴の調整を行ってくれるのです。
ノードストロームの顧客満足は徹底しており、顧客からの無条件の返品受け入れるのは当たり前。その返品時に手配が間に合わなかった商品を顧客の移動先のホテルまで販売員が飛行機で届けたという話まである。ここまでくると伝説ですね。
このように顧客を最優先にし、いつでも、何でも、どこからでも顧客の満足のいく商品を取り寄せ、それを最大の満足と一緒に提供する事を従業員のプライドとする独特の企業文化を形成したことが、15年でこの百貨店を、全米一有名な百貨店にした秘密なんです。
本部至上主義で官僚的な組織を作ってしまったために、意思決定の硬直性を起こして会社更生法のお世話になるようになってしまったメーシーとは、まさに対照的です。メーシーの素晴らしいところは、顧客に対するサービスというものを、販売戦略のひとつとしているのではなく、企業の存在理由(レーゾンデートル)にしていることです。
顧客満足を企業の存在理由とし、一人一人の従業員が、お客様に最高の満足を提供できるような仕組みを作ったからこそ、伝説的な顧客満足の逸話がたくさん生まれてきたんですね。
では、ノードステロームはどんな経営を行っているのでしょうか?
■従業員に自由と責任感を与えている
ノードステロームに従業員教育のプログラムやマニュアル、これをしてはダメといったルールは社内に存在しません。ノードストロームの従業員ハンドブックには、「どんな状況下でも、自分のベストの判断で、行動をしなさい。それ以外のルールはありません」「いつ、いかなるときも、自分の優れた判断力を使って決めなさい(法に触れない限り)」と記救されているそうです。
多種多様のニーズを持って来店されるお客様のことが、一番よく分るのは現場で実際に接している従業員。この従業員こそが、お客様にとって一番正しい判断ができるという考えだ。そして従業員はお客様に満足を提供できるように、自由に経費を使っていいことになっている。つまり一見無駄に見える経費をお客様に使ったとしても、ノードストロームでは褒められる事はあっても、咎められることは無いのです。
このように従業員に自由を与えるとともに、販売担当者は、すべてコミッション、つまり、歩合制で給料を受け取るという形になっています。つまり、自由を与えるとともにその責任を自分が取る形にすることで、従業員全員一人一人が経営者としての感覚を持つことができる仕組みになっているのだ。このような仕組みになっているので、従業員達は自由な発想と様々な方法でお客様を喜ばせる事ができるのです。
逆に言うと、経営者の感覚が無いとノードステロームで勤める事はできない。従業員に経営者感覚を持たせ、お客様の次の来店や知人に好影響を与えてもらうために何をするかを考え、実行することが自分たちが仕事をする目的であること明確にする事で従業員達のモチベーションを上げているのです。
■顧客管理はアナログで
ノードステロームではコンピューターで顧客情報を管理し、全てのお客様に画一的な情報を提供すると言うことはない。ノードステロームでは販売員に、会社から「顧客ノート」を支給し、顧客名、住所、電話番号、クレジットカードの口座番号、サイズ、前回の購入品、贔屓のブランド、好みの傾向、特別注文、既製品が合いにくいとかセールが好み等など・・・、顧客に関するデータが書き込めるようにしている。
仕入れがあると、各販売員は、誰に合いそうなのかを考えて、その顧客に直接電話をする。ノードステロームでは、朝一番の作業は、こうした顧客への電話をする事から始まるのです。また、従業員は、商品企画会議にもバイヤーと一緒に参加し、お客様を想定した品揃えのアドバイスを行えるようになっている。つまり現場の声が、品揃えにダイレクトに反映できる仕組みになっているんですね。逆に、バイヤーも1日に数時間、販売の現場に立つことになっています。
「我々がユニークなのは、豊富な体験を通し、人間としての感覚で仕入れているからだ」「ノードストロームはパーソナルタッチをテクノロジーに取って代わらせることはしない」、という経営の方針のもと、非常にアナログチックで人間的な、お客さま最優先の仕入れの仕組みを持っているのです。
■組織の最上位は販売員、他は販売員の支え役
ノードステロームが最も重要視しているのは、お客様の声。その声を仕入れから販売の全てにわたって反映し、顧客満足に徹底するために、面白い組織図を持っている。
一般的な会社は、社長をトップとした三角形の組織図を持っているが、ノードストロームはまったく逆で、顧客と接点になる販売員をトップに逆ピラミッド型となっているのです。
つまり、お客様に接する現場をサポートするために、マネージャーや役員がいるという考えなのです。「ノードストロームが有利になれるのは、顧客に誠心誠意つくすこと。そして、それを行うのは他ならぬ売場の販売員たちだ」という考えのもと、大切なお客様のニーズに合わせてサービスを提供し、お客様の声を経営戦略に反映できる形に組織を形作ったといえる。また、マネージャーや役員のサポートがあるお陰で、販売員達は最大限の力を発揮できるし、一般の会社のような上司との必要の無い壁を取り除いているのだ。
日本でも顧客満足という言葉が使われて久しい。しかし、ノードストロームの例を見ると、多くの販売店の顧客満足は、販売戦略のためのひとつの方便に見えてくる。本当の顧客満足を提供することで、お客様に選ばれ、利用され続けるお店や会社になることは出来る。
経営者がすることは、お客様に顧客満足を提供できる仕組みを、会社として作ることではないのだろうか。

