ダイレクトバンクス発行のフリーペーパーコンテンツ。経営に役立つビジネスコンテンツやマーケティングの情報を凝縮したコラム集
トップへ
theme

営業の基本概念が変わる

img

社会環境の変化により、今までのマーケティングは、通用しない


  仕事柄、書店に足を運ぶことが多い。行き場所は決まって、ビジネス書コーナー。ビジネス書コーナーに行くと、経営や組織作りから、会計や経理に関するものまで様々な種類の本が並べられているが、その中で一番目に付くのが営業に関する書籍だ。
 ディベート術、セールストーク、マーケティング、企画の立て方、思考方法、販売計画の立て方、等など…、ありとあらゆる営業に関する本が並べられている。


  会社にとって、売上が非常に重要なモノで。その売上が営業によって作り出されている会社が多いことを考えると、やっぱり一番多くのヒトが興味を持つのが営業なのだろう。そう言えば昔、起業したての頃に、ある経営者の方に「売上を作り出すのは社長の仕事だ」と言われたことがある。これは、「社長自ら営業に出ろ!」という意味ではなく、「売上を作り出す基本的な仕組みは社長が考えるべきだ」という意味。社長が売上を作り出す大筋を考え出さないでふんぞり返り、個々の社員の自己努力に売上を任せていてはダメだよという戒めの言葉だった。 自分で経営というものをやってみると確かにその通りで、営業方法を社員の自己努力だけに任せていても、なかなか上手くは行かないことに気づく。

 やはり経営者はマネジメントを学ぶだけでだけでなく、売上を上げる仕組みとしての営業方法を日々の業務の中で、しっかり考えて作りこんでいかなければいけないものなのだ。
 では、いったいどんな営業方法が、一番効果的なのか?世の中には、たくさんの営業に関する情報が氾濫しているだけに、その中でどれを選択し、取り入れるべきなのかは迷ってしまうのである。答えから言うと、どんな営業方法がベストなのかは、会社によって異なってしまう。 ターゲットが生活者なのか法人なのか、商品や会社の認知度や規模はどれくらいなのか、商品のニーズはどれくらいあるのか等など、様々な条件によって変ってくるからだ。だから一番効果的な営業方法を探すというより、自分の会社にとってベストな営業方法を探すべきとならざるを得ない。


  会社によって持っている強みは違うので、その強みを最大限に活かしつつ、取扱商品が持つ特徴を最も顧客に伝え、理解させ、納得させる営業方法を選ぶ。その上で、現場で販売する営業マンたちが、自分に足りないスキルを身につけていけるように指導するというのが、営業力がある会社にするための方法であるとしか言えないのだ。このように会社によって一番効果的な販売方法は異なるものの、ハッキリといえることは、今、販売という概念を再確認しなければいけない時期に来ているということである。それは、戦後60年を超え、日本の社会環境が大きく変化する時代に突入しているからだ。 この部分をきちんと理解した上で、営業方法を考えていかないと、会社の業績を今後伸ばしていくのは難しいかもしれない。

 戦後60年間、日本の経済は右肩上がりに成長してきた。もちろん短期中期的に見れば、停滞したり、下がった時期もあるが、大きなサイクルで見れば右肩上がりに成長してきたことは間違いないことである。何故、右肩上がりに成長してくることができたのかというと、国内に限って言うなら、そのベースを作ってきたのは人口が増加してきたから。毎年、国民の数が増える。そこに新しい商品やサービスが流通したから経済が成長してきたのだ。ところが2006年、戦後の日本が経験したことが無い事態が起こった。それが少子高齢化による人口の減少である。
  国立社会保障・人口問題研究所が2006年12月発表した人ロ推計によると2050年の推計人口は9515万人。(合計特殊出生率を1.26とした中位仮定)。ということは、少なくとも今後43年間で日本の人ロは3260万人減ることになるわけだ。一年平均で74万人。これは新潟市(78万人)や静岡市(70万人)といった規模の都市県庁所在地が、毎年一つずつ日本から消えていく計算となる。少子高齢化による人口の減少。このことによってどのような社会になっていくのかという予測は見解によって異なるのだろうから、必ずしも悲観的になる必要は無いと思うのだが、ただハッキリと言えることはこれからの時代、営業で販売していく先は減少していくということ。これは疑いようの無い事実である。
 戦後、日本で使われるマーケティングは、人ロ増加、経済は右肩上がりを基本ベースとなっている。社会環境がそうだったのだから、そういうマーケティング手法を採用して当たり前。
 ところが現在、私達を取り囲む社会環境は、少子高齢化の進行による人口の減少傾向だけでなく、中長期的にはGDP(国内総生産)の上昇は見込めないと言われているし、500万人近くと言われるフリーターやNEETの存在、年金問題、増税問題などの影響で可処分所得も低く抑えられており、この傾向はあと数年でより顕著になると言われています。
こういった社会環境が根本的に変化しているので、今までのマーケティングは通用しない。社会環境が変ったのだから、それを考慮したマーケティングを採用していくべき時代になっているのです。


  では、どのような考えを元にこれからの営業方法を考えていけばいいのでしょうか?
 まずは顧客の流出を防ぎ、顧客単価を上げていくことができるような営業方法を取ることです。当たり前の話ですが顧客からの売上が安定すると、会社の利益も安定します。しかし、顧客の流出によってもたらされるデメリットはそれだけではないのです。まず顧客に販売するには、新規客に販売する時の六分の一のコストで済むといわれていますから、この方法で行けばコストの削減にもなります。それに顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善されると言われていますから、利益のアップにも繋がるのです。今までは、毎年人口が増加していた頃は新規客をどんどん囲い込んで、市場シェアを奪っていくという価値観だった。でもこれからの時代は、既存の顧客との繋がりを太くすることで利益を増やす。その上で更に収益を伸ばしたい分だけ新規客を増やす努力をするという営業方法が理想的。

  マーケティングの世界的権威であるフイリップ・コトラーも、今、マーケティングの概念を変えるべきだといっている。従来のマーケティングの概念は「商品を遅滞なく流通させ、販売するための活動全般である」という程度で示されていたけれど、これからの時代は、顧客との繋がりをつくること」「売り手がビジネスをつくるのではなく、顧客にビジネスの機会をもらっているという意識を持つこと」が大切だと解く。
でも考えてみれば…。顧客との関係を太くすることで利益を増やし、更に収益を増やしたい分だけ新しいお客様を増やすというのは、本来日本人が得意とする営業法。コトラーが言っている、「顧客との繋がりをつくること」も「売り手がビジネスをつくるのではなく、顧客にビジネスの機会をもらっているという意識を持つこと」も、昔日本にいた、近江商人などが残している言葉と同じです。


  ちなみに日本の国の人口が減少するのは、今回が四回目。三回目は江戸中期の頃に起こり、50年ほど続いたと記録されています。過去に同じようなことがあり、その中でも成長を続け、多くの豪商を輩出してきた日本流マーケティング。そのマーケティングをもう一度見直し、そこから学ぶことに、これからの時代に延びていく営業術のヒントがあるのかもしれません。


  新規客をどんどん囲い込んでいけばいい時代は終わった。
 見込み客と、顧客と、得意客と、どんな関係を作るために、どんなアプローチやフォローをしていくのか?
そういうことをしっかりと抑えることができている営業方法を選ぶことが、これからの時代に他き残り発展していく会社になるのではないだろうか。